本日の「爆音映画祭2016 特集タイ|イサーン」はアピチャッポン・ウィーラセタクン監督特集です。昨日は埼玉と横浜での展示のために来日中のご本人に『モンラック・メーナム・ムーン』上映回にご来場いただきました!
「さいたまトリエンナーレ2016」(〜12/11)
「BODY/PLAY/POLITICS」横浜美術館(10/1-12/14)
本日最終回の『アイアン・プッシーの大冒険』は混雑が予想されます。ご覧になりたい方はお早めにご来場くださいませ。
ご入場は、前売1回券をお持ちの方、前売り3回券と当日券の整理番号順となります。
当日券の販売及び前売り3回券の整理券の配布は1回目の開場1時間前より受付にて行いますので、必ず整理券をお受け取りください。受付開始より1日分の整理券を発行いたします。
9月30日(金) 爆音上映 アピチャッポン・ウィーラセタクン特集 (会場:WWW)
14:30 OPEN/15:00 START 『アートプログラム<中・短編集>』(〜16:39終映予定)
17:15 OPEN/17:45 START 『光りの墓』(〜19:47終映予定)
20:10 OPEN/20:40 START 『アイアン・プッシーの大冒険』(〜22:10終映予定)
会場:Shibuya WWW、WWW X(東京都渋谷区宇田川町13-17ライズビル地下&2F WWW TEL03-5458-7685/WWW X TEL03-5458-7688) 「渋谷駅ハチ公口から徒歩7分。旧CINEMA RISE」 http://www-shibuya.jp/
「爆音映画祭2016 特集タイ|イサーン」http://bakuonthai2016.com/
『アートプログラム<中・短編集>』
2005-2010年/イギリス・韓国・日本・フランス/99分/デジタル
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン
提供:トモ・スズキ・ジャパン
※台詞のある作品は日本語字幕付きで上映
『Worldly Desires』(2005年/42分32秒)韓国「チョンジュ映画祭」の企画『三人三色』で制作。
『エメラルド』Emerald(2007年/11分)閉館してしまったバンコクのエメラルド・ホテル。その場所の記録と記憶。
『My Mother’s Garden』(2007年/6分42秒)ディオールのデザイナーがもつ宝石コレクション。それに母の庭のイメージを重ねて撮影。
『ヴァンパイア』Vampire(2008年/19分)「旅」をテーマにした映像作品を依頼され、自ら出かけたタイとミャンマーの国境付近にはヴァンパイア鳥の伝承があり…。
『ナブアの亡霊』Phantoms of Nabua(2009年/10分43秒)映像インスタレーション「プリミティブ」プロジェクト(09)と同時制作。
『木を丸ごと飲み込んだ男』A Man Who Ate an Entire Tree(2010年/9分)タイの野生林で伐採を始めた男は、やがて、自然のドラッグ作用で自分をコントロールできない状態に…。
展示用に作られたインスタレーション作品や、韓国全州国際映画祭からの依頼で作られた『Worldly Desires』など、2005年から2010年の間に製作された中・短編集。ちょうどアピチャッポンの名前が世界的に周知し始められ、長編をコンスタントに発表していた時期。ここで行った実験が長編に反映され、そしてまた、長編での成果がここにフィードバックされる。それはアピチャッポンの映画の帰るべき場所でもあり、あらゆる場所への出発点とも言える場所でもある。そんなアピチャッポンの思考の広がりを、ここに見て取れる。試されているのは、大きく分けて、光と音と時間。映画を作り出す3大要素と言えるものだが、長編での「物語」の縛りから解放されているゆえ、映画はストレートにその3つに向き合う。まったく音のない作品もある。だがそこに描かれた光と時間からは、確実に音が聞こえてくる。映画を幻視し、幻聴し、未曾有の時間を体験する99分間。(樋口泰人)
『光りの墓』 Cemetary of Splendour
2015年/タイ・イギリス・フランス・ドイツ・マレーシア/122分/デジタル
監督・脚本:アピチャッポン・ウィーラセタクン
撮影:ディエゴ・ガルシア
音楽:アックリットチャルーム・カンラヤーナミット
出演:ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー、パンロップ・ロームノーイ、ジャリンパッタラー・ルアンラム
提供:ムヴィオラ
© Kick The Machine Films/ Illuminations Films (Past Lives) / Anna Sanders Films/ Geißendörfer Film-und Fernsehproduktion /Match Factory Productions/Astro Shaw (2015)
イサーン地方の森を舞台にした『ブンミおじさんの森』から約5年。アピチャッポンの今のところの最新長編は、自身の故郷であるイサーン地方のコーンケンを舞台にする。医者だった両親の思い出が、そこには込められている。しかし眠り病に冒されベッドに横たわる兵士たち、彼らが入院している病院の地下に眠るかつての王宮、そして見えない地下宮殿を案内する、男性が乗り移った女性など、思わぬ着想に誰もが驚くだろう。それはもちろん単に奇をてらったものではないことは、映画を見ればわかる。現在のタイの情勢、かつて起こったこと、これから起こるかもしれないこと。それらによって「必然的に」兵士たちや宮殿のエピソードが湧き出てきたのだ。イサーンという場所の土地に沈殿した時間が、この映画を作ったのだとも言える。「そこでは、単純な事柄が魔法になる」と監督が語るイサーン地方へ向けた言葉は、そのまま彼の映画作りにつながっていくだろう。(樋口泰人)
『アイアン・プッシーの大冒険』 The Adventure of Iron Pussy
2003年/タイ/90分/デジタル
監督・脚本:マイケル・シャオワナーサイ、アピチャッポン・ウィーラセタクン
撮影:スラチェ・トーンミー
音楽:Animal Farm
出演:マイケル・シャオワナーサイ、グリッサダー・スゴーソン、ティーラワット・トーンジッティ
提供:GMM GRAMMY PUBLIC COMPANY LIMITED
© Kick the Machine Films
2003年の東京国際映画祭他で上映されて以来、しばらく日本では見ることのできなかった本作。フィラデルフィア出身のマイケル・シャオワナーサイが1999年から制作を始めた「アイアン・プッシー」シリーズの1本として作られたもので、アポチャッポンとシャオワナーサイの共同監督作品となる。ミュージカル・アクション・コメディという説明がされてはいるが、とにかくアピチャッポン・ファンにとっては、その他の作品とは全く違うアピチャッポンの映画を観ることのできる貴重な作品。バンコクのセブンイレブンでバイトをしている男が実は女装スパイ(シャオワナーサイが演じている)であるという設定や、告知用の写真から想像されるえげつなさはもちろん、音楽でグイグイ攻めてあらゆる意味不明の唐突さを納得させてしまう力技など、見どころツッコミどころ満載。アピチャッポンの映画に見ることのできる惚けたカットや音楽の使い方のコアが、ここにある。(樋口泰人)