1/25(金)~27(日)に東京都写真美術館ホールにて上映とトークショーで構成する「爆音映画祭2019 特集タイ|イサーン VOL.3」を開催します!
映画祭の見所などはこちらsoi48によるboidマガジンの連載「微笑みの裏側」をぜひチェックしてみてください。登録のみで無料で読んでいただけます。
微笑みの裏側 第24回
「爆音映画祭2019 特集タイ|イサーン VOL.3」特別編
https://magazine.boid-s.com/articles/2019/20190124001/
微笑みの裏側 第17回
『ザ・ムーン』で描かれるルークトゥンの女王
プムプワン・ドゥワンチャンについて
https://magazine.boid-s.com/archive/article/–id/15748
日本初上映のタイ映画『ザ・ムーン』、東京国際映画祭でも話題を呼んだカンボジア映画2作ほか、タイ・イサーンから国境を越えてカンボジアへと広がる作品群を一挙上映!
またタイの代表的音楽プロデューサー、スリン・パークシリによるトーク、空族のカンボジアドキュメンタリーも上映!
今回の「爆音映画祭特集タイ|イサーンVOL.3」は、タイの伝説の歌姫プムプワン・ドゥワンチャンの伝記映画『ザ・ムーン』(2011)が日本初上映ほか、昨年の東京国際映画祭でも話題を呼んだカンボジアン・ロックの歴史に迫ったドキュメンタリー『カンボジアの失われたロックンロール』(2014)、そして、カンボジア系アメリカ人の娘が、クメール・ルージュ以前と以降の家族のルーツを、音楽で紐解いていくヒューマンドラマ『音楽とともに生きて』(2018)の2作も上映が決定。イサーンに限らず東南アジアの歴史と音楽が広く俯瞰できるラインナップでお届けします。
その他、第12回大阪アジアン映画祭で上映されスペシャル・メンションを獲得したアノーチャ・スウィチャーゴーンポン監督の『暗くなるまでには』(2016)、過去の「爆音映画祭特集タイ|イサーン」で好評を博した『東北タイの子』(1982)、『モンラック・メーナム・ムーン』(1977)、『花草女王』(1986)も上映。また『モンラック・メーナム・ムーン』の音楽も務めている、タイの代表的音楽プロデューサー、スリン・パークシリも来日してトークショーを開催します。
そして、一昨年に公開された『バンコクナイツ』(2016/富田克也監督)に音楽・録音として参加したYOUNG-Gが、カンボジアはプノンペンにある音楽レーベル“KlapYaHandz”を訪ねる様子を富田克也が記録した<「RAP in プノンペン」長い予告編>も上映。「ONE MEKONG MEETING」と題して、stillichimiyaのYOUNG-G、MMMが中心となり進めてきた東南アジアの音楽ルールを探るプロジェクトの新たな結果報告もお楽しみに!
チラシはこちら
http://www.boid-s.com/wp-content/uploads/2019/01/bakuonb5movie.pdf
「爆音映画祭2019 特集タイ|イサーン VOL.3」
日程:2019年1月25日(金)~27日(日)
会場:東京都写真美術館ホール(東京都目黒区三田1-13-3恵比寿ガーデンプレイス内/TEL 03-3280-0099)
上映作品:『ザ・ムーン』『暗くなるまでには』『カンボジアの失われたロックンロール』『音楽とともに生きて』『ラップ・イン・プノンペン』『東北タイの子』『モンラック・メーナム・ムーン』『花草女王』
トーク出演:スリン・パークシリ、宮崎大祐、空族、Soi48、OMK、樋口泰人
料金:当日1回券 上映のみ1500円/トーク付き上映1800円
※当日午前10:00より、その日の全ての上映回について販売を開始いたします。
・全席指定/190席/各回定員入替制/立ち見不可/事前予約不可
・満席の場合、ご入場をお断りいたしますので、予めご了承ください。
・開場は各上映開始時間の10分前を予定しています
※現存するマスター起因により上映素材の映像・音声の状態が悪くお見苦しい作品もありますことを、予めご了承ください。
主催:boid、空族、Soi48
協力:オリエンタルブリーズ、タイ・フィルムアーカイブ、東京国際映画祭、大阪アジアン映画祭
助成:国際交流基金アジアセンター
2018年夏のクン・ナリンズ・エレクトリック・ピン・バンドから約半年。3回目となる「爆音映画祭2019 タイ|イサーン特集」のライヴでは、再びアンカナーン・クンチャイさんを招聘する。『バンコクナイツ』でも観ることのできた彼女の姿はあまりに凛々しくて、われわれを一気に時間の果てへと連れ去る一直線の視線とともにあったと思う。われわれは今どこにいるのか、という問いが生まれる。この日本、この東京。あまりにばかげていて冗談ではないかと思うものの冗談ではないこの日本で生きるしかないわれわれの身体がかけがえのないこのひとつでしかない悲しみが、彼女の歌声とともに湧き上がる。その悲しみとともに怒りばかりが身体を責め立てるのだが、急がば回れ。彼女の歌声とともにこの東京からイサーンを経て世界の果てへと心と身体をゆっくりと広げてみる。いくつもの映像がわれわれの身体を貫き通すだろう。
そして今回の上映はイサーンだけではないタイの各地、あるいは国境を越えてカンボジアへと広がる作品をラインナップした。その風景と歴史の中で、われわれは生きる。いつの日かこの東京のゆがんだ風景も、それらの中にゆっくりと飲み込まれていくだろう。笑えない冗談には、そんな果てしない未来からのほほえみを返すことにしよう。われわれは今、そんな微笑みの中にいるのだ。There’s a Riot Goin’ On
樋口泰人(boid主宰/爆音上映&爆音映画祭プロデューサー)
タイ東北部の名称。タイ王国の人口は約6718万人。イサーンの人口はタイ王国総人口の約三分の一を占める。ちなみにバンコクの人口は約825万人。都市圏の人口を合わせると約1456万人というから、いかにバンコクが東南アジア屈指の世界都市であるかがわかる。イサーンはラオスとカンボジアに隣接している。北部はイサーン語と呼ばれるラオス語に近い言葉が使われ、南部はクメール系住民が多い。食文化も異なりソムタム(パパイヤのサラダ)、ガイヤーン(焼き鳥)、カオニャオ(もち米)などが有名である。決して豊かとは言えない不安定な土壌での農業従事者が多いため、低所得者が多くバンコクに出稼ぎに行く者が多い。バンコクではタクシー運転手、土木現場の作業員、飲食店、水商売で労働する者が多く、中央のタイ人の差別対象として見られることも少なくない。このように都会と地方だけでなく人種問題も混じった格差が存在する。微笑みの国と呼ばれるタイだがこういった裏の面も存在するのだ。
そんなネガティブなイメージがつきまとうイサーンだが、非常に豊かな娯楽文化を持っている。60年代からイサーン人をターゲットにした映画、音楽が大量に作られていたのだ。TV、インターネットが普及していない娯楽の少ない時代、映画と音楽が制作されるのは当たり前と思うなかれ。近隣諸国のラオスや、ミャンマーは自国でレコードを制作する豊かさを持っていなかったのだ。カンボジアはポルポトの影響でポップス産業に空白期間が生まれている。そんななかイサーンは語り芸モーラム、イサーン語の歌謡曲のレコードやイサーン人用の大衆映画を制作していたというから驚きだ。何故豊かとは言えないイサーン人にこのような文化が根付いているのか?その答えは簡単だった。
タイを代表する音楽プロデューサー、ドイ・インタノンはこう言っている。「イサーン人は娯楽のための金を惜しまない。たとえ1日働いた稼ぎが消えようとも欲しい音楽には金を払う」と。つまり単純に娯楽が好きな人々なのである。70年代~90年代初頭にかけてレコードを大音量でかける移動式サウンドシステム・ジュークボックスや野外映画上映が農村を回っていた。特に農村部での映画の野外上映は大好評で、入場料は無料、かわりに興行主から薬を買うという富山の薬売り商法が成り立っていたのだ。
今回紹介する映画は中央の知識階級が映したイサーン、イサーン人を喜ばせるためにイサーン人自ら制作した大衆映画、イサーン人の境遇を生々しく描いた映画がラインナップされている。様々な角度から描かれたイサーンと素晴らしい音楽を味わってもらいたい。そこにはアピチャッポン・ウィーラセタクン、空族の映画『バンコクナイツ』に繋がる重要なヒントがあるかもしれない。
Soi48(宇都木景一&高木紳介)
三ヵ月以上に及んだ『バンコクナイツ』の撮影。毎夜へとへとになりながら、明日のためのミーティングだと皆で一室に集まりただ呆けていると、録音マンであり、“現場DJ”でもあったYOUNG-Gがいつものように音楽を流し始める。
いつの夜だったか、毎夜繰り返し聴こえてくる甲高い女性の歌声に気づく。特徴的なキーボードのイントロ、懐メロとしか思えないギターのリフ。ルークトゥンか。いやモーラムのよう? いずれにせよ、タイ語かイサーン語だという見当で歌詞に耳を澄ます。が、ちょっと違う…いや大分違う? ん? 何語だこれ? 気づけば途中からラップも混じってきた! チョーかっこいいじゃん…。
「いやぁ、カンボジアのSLEYLEAK(スレイリーク)っていう女性歌手らしいす」と説明するYOUNG-GのPC画面を思わず覗き込むと、「途中から入ったフィメールラッパーがLISHA(リーシャ)。それ以外はまったく謎っす。それにしてもこのPV、映画のシーンみたいじゃないっすか? なんなんすかねこの人たち?」と、YouTubeの画面を観ながらいう。
それにしても、堀士としてのYOUNG-Gのアンテナが、この段階で既にタイをはみ出ていたことに驚いたのはさておき、こうして私は彼らを知るに至った。それらの動画をYouTubeにUPしているアカウント名、“KlapYaHandz”とは一体なんなのか。私たちは、虜になってしまったSLEYLEAKやLISHAを筆頭に、“KlapYaHandz”アカウントがUPする動画を毎夜追い続け、どうやらその屋号はレーベル名であり、そして彼らは映画も作っているのだろうという予想を立てた。
『バンコクナイツ』の撮影現場でYOUNG-Gが一番多くかけ続けたのは、なぜかカンボジアの曲だった。あの強烈なタイ・ラオスでの撮影期間、ずっとテーマ曲であり続けたSLEYLEAKの歌声―。
矢も楯もたまらずYOUNG-Gと私は、カンボジアの首都プノンペンに“KlapYaHandz”を訪ねていた。
富田克也(映画監督)
1/25(金) 18:15
1/26(土) 17:55 Talk: Soi48(DJ)
2011年/タイ/127分/デジタル
監督:バンデッド・ソンディー
出演:パオワリー・ポーンピモン、Nattawut Sakitjai、Wataya Jetapai
提供:Sahamongkolfilm International Co., Ltd.
© 2011 SAHAMONGKOLFILM INTERNATIONAL CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED
1992年に30歳で病没後、『ザ・ムーン』はタイで国王の写真と並び置かれるような「歌聖」として祭られる伝説の歌姫プムプワン・ドゥワンチャンの伝記映画。貧困家庭に生まれ、恋愛、様々なトラブルに遭いながらも力強く、タイ国民にエンターテイメントを提供し続け「ルークトゥン女王」と呼ばれるまでになった彼女。その短く儚い人生をコメディー要素を交えず描きタイ国民の涙を誘った。この映画をきっかけにブレイクすることになった、主演女優に抜擢され人気歌手となったパオワリー・ポーンピモンの演技も必見。(宇都木景一)
1/26(土) 13:00 Talk: 宮崎大祐(映画監督)
2016年/タイ・オランダ・フランス・カタール/105分/デジタル
監督:アノーチャ・スウィチャーゴーンポン
出演:アーラック・アモーンスパシリ、アピンヤー・サックジャルーンスック、アッチャラー・スワン
提供:LUXBOX
字幕提供:大阪アジアン映画祭
© ELECTRIC EEL FILMS
監督の生まれた1976年、タイではタンマサート大学における左派学生や市民活動家などの集会を警察組織が攻撃して数10名の死者と150名を超える負傷者を出した虐殺事件が起こった。タイはその日のうちに軍事クーデターが宣言される。本作は、その集会に参加して、その後小説家になった女性への、女性映画監督によるインタビューから始まる。タイの現在と過去が交錯、混乱しながら作家のインタビューを通し、あるいは映画監督の視線を通し、そしてまた自分自身として登場するタイの俳優たちの言葉を通し、語られていく。それはもはや「語り」なのか、「現実」なのかもよくわからない。いくつものエピソード、いくつもの現実、いくつもの夢。それらの断片が重なり合い、タイの「現在」が浮かび上がり、そしてそれは世界に向けて開かれていく。世界各国の映画祭で上映、評判を呼んだ斬新な手法と今を見つめる視線は、日本の今にも確実に関わってくるはずだ。(樋口泰人)
1/26(土) 15:45
2014年/アメリカ・カンボジア/106分/デジタル
監督・撮影:ジョン・ピロジー
音楽:スコット・スタフォード
出演:シン・シサモット、ロ・セレイソティア、バイヨン・バンド
提供:ジョン・ピロジー
字幕提供:東京国際映画祭
長らく日本未公開だった悲劇のカンボジアン・ロックの歴史に迫ったドキュメンタリー。1975年4月17日、かつて“アジアの真珠” として知られた首都プノンペンがポル・ポト率いるクメール・ルージュによって占領され、ロン・ノル政権は崩壊、同時にカンボジアのロックンロールも悲劇的な終わりを迎える。多くの知識人同様にポップミュージックにおけるスターたちも拘束され処刑され、レコードを破壊、クラブも閉鎖、西洋風の音楽、ダンス、洋服も厳しく法に触れるものとなった。生存者へのインタビュー、シン・シーサモット、ロ・セレイソティアといった伝説の大歌手知られざるアーカイブ映像から失われた歴史が甦る。サウンド・トラックはDUST TO DIGITALから発売され、ワールドミュージック・ファンのみならずロックファンの間でも話題を呼び好セールスを記録している。(宇都木景一)
1/27(日) 16:45 Talk: 空族(映像制作集団)+OMK
2018年/カンボジア/91分/デジタル
監督:ヴィサル・ソック、ケイリー・ソー
出演:ヴァンダリス・ペム、スレイナン・チア、ソウナ・カニカ
字幕提供:東京国際映画祭
@innovision Pictures
カンボジアの音楽を掘りはじめると一番最初に覚えることになる名前がある。シン・シーサモット。キング・オブ・クメールミュージックだ。
フランスの植民地であったカンボジアは東洋のパリと呼ばれ、早くから楽器と共にジャズやラテン、ポップス、R&Bが伝わった。その後、カンボジアはフランスからの独立を果たすが、今度はベトナム戦争によってアメリカ軍と共にロックンロールが入ってくる。シーサモットが活躍したのはこの時代だった。60年代、彼は世界中を席巻していたロックにカンボジアの伝統音楽を融合させ、後にクメールロック、クメール歌謡と称されるジャンルのオリジネーターとなる(詳細は『カンボジアの失われたロックンロール』に描かれる)。
その頃、ここカンボジアでもタイと同じく親米軍事政権が誕生し、アメリカの傀儡ロン・ノル首相は、シーサモットをプロパガンダとして利用した。その後、反米勢力であったポル・ポト率いるクメールルージュは、それらすべてを西洋文明からの汚染源として破壊し、シーサモットをはじめ、多くの歌手や作曲家らの行方もそこで途切れ、その後を知るものは誰もいない。
『音楽とともに生きて』は、ポル・ポト時代とそれ以前、そして現在という3つの時代を、シーサモットの曲「バッタンバンに咲くプルメリア」という曲を軸に描いている。当時、タイ国境側の難民キャンプで生まれ、その後アメリカ渡った共同監督のひとり、ケイリ―・ソー。そして同じく共同監督のヴィサル・ソックはフランスへと難を逃れた。
これまでタブーだったポル・ポト時代について、新しい世代である彼らがついに語りはじめたのだ。そして、そのきっかけは彼らの記憶に残る音楽から手繰り寄せられていく。(富田克也)
1/27(日) 16:45 Talk: 空族(映像制作集団)+OMK
2018年/日本/20分/デジタル
監督:富田克也
出演:YOUNG-G、ヴィサル・ソック
Special Thanks:KlapYaHandz
提供:空族
© kuzoku
2011年にHIPHOPグループstillichimiyaのトラックメイカーBig BenとYOUNG-Gのふたりと、フィリピン、マニラのスラム街トンド地区のHIPHOPコミュニティとの交流を描いたドキュメンタリー映画『RAP IN TONDO』(2011年)の続編。Young-Gがカンボジア、ヒップホップ・クルー「KlapYaHandz」に会うためにカンボジアの首都プノンペンに潜入する。そこにはクメール・ルージュの傷跡が残されていた。(宇都木景一)
1/26(土) 10:30
1982年/タイ/130分/デジタル
監督・脚本:ウィチット・クナーウット、ウィチット・クナーウット
撮影:ポンニティ・ヴィラヤシリ
音楽:カニット・クナーウット
出演:トーンパーン・ポーントーン、ワンプーン・シリテープ、クライラート・クリアンクライ
提供:Five Star Production
© Five Star Production Co., Ltd.
乾いた大地に照りつける太陽。イサーン地方は豊かな自然を誇るタイにおいて旱魃と水害が交互にやってくる不毛の土地と名高い土地だ。(現代のイサーン地方の旱魃は高度経済成長期の日本をはじめとする海外ODAの製紙産業による森林伐採が弊害となっていることはあまり知られていない)
荒野を進む村人達のキャラバンは、新しい土地を求めて旅立ってゆく。80年代に撮られたとは思えない幻想的な村の人々の暮らしは、自然とともに生きその厳しさの中で培ってきた営みをおかしみを持ってわたしたちに訴えかける。83年にマニラ映画祭で審査員であった大島渚が本作『東北タイの子』を絶賛したのは、そこになによりも“生命の躍動”が描かれていたからであろう。
注目はやはり村に錦を飾るモーラムだ。登場するアンポンは再来日するアンカナーン・クンチャイにも影響を与えたモーラムの詠い手である。進化を続けるイサーン音楽、モーラムにぜひ体を揺らしていただきたい。(相澤虎之助)
1/27(日) 13:30 Talk: スリン・パークシリ(音楽プロデューサー)
1977年/タイ/114分/デジタル
監督・脚本:ポンサック・チャンタルッカー
脚本:ニワット・シンパソッムサック
音楽:スリン・パークシリ
出演:ソンバット・メータニー、ナオワラット・ユックタナン、ノパドン・ドゥアンポーン
提供:Boonserm Kietmingmongkol
© Boonserm Kietmingmongko
70年の伝説的音楽映画『モン・ラック・ルークトゥン』のヒットを受け制作された幻のイサーン映画。ウボンラチャタニーを流れるムー川を背景にイサーン人の生活を描く。ダオ・バンドン、テッポーン・ペットウボン、シープライ・チャイプラなどルークトゥン、モーラム歌手が大集合。イサーンのコメディー王ノパドン・ドゥアンポーン、電気ピンを発明したトーンサイ・タップタノンが所属するお笑い楽団ペットピントーンも映画に華を添える。イサーン音楽の重要人物であり作詞家でもあるポンサック・チャンタルッカーが監督となり、音楽プロデューサーのスリン・パークシリに「イサーン版『モン・ラック・ルークトゥン』を製作してくれ」と依頼。イサーン音楽界が総力をあげて製作した傑作音楽映画。(宇都木景一)
※現存するマスター起因により上映素材の映像・音声の状態が悪くお見苦しいことを、予めご了承ください。
1/27(日) 11:00
1986年/タイ/125分/デジタル
監督:スラシー・パータム
脚本:スパルーク・クライルーク
音楽:ポンサック・チャンタルッカー
出演:プロームポン・ノッパリ、チャウィーワン・ダムヌーン、トーンカム・ペンディー
提供:SF Cinema City
© Suwat Thongrompo
モーラム楽団をコンテストで優勝させるためにバンコクの青年とイサーン人達が知恵を絞り伝統音楽を進化させる音楽映画。社会派映画と異なりバンコクとイサーンの格差、都会と田舎の文化の違いを面白く軽快に描いている。『モンラック・メーナム・ムーン』で監督をつとめたポンサック・チャンタルッカーが音楽を監修し、臨場感あふれる当時のライブの様子、スタジオ風景が映っている。そして伝説のモーラム楽団、ランシマン楽団のチャウィーワーン・ダムヌーンとトーンカム・ペンディーがコンビで出演。バンコク青年にモーラムの基礎を教え込むために様々なモーラムの型を披露するシーンはこの映画の見所だろう。製作された86年から現在に至るまでイサーンの野外映画やお祭りで上映され、娯楽を愛すイサーンの心をつかんだ人気作。単純で解りやすいストーリーは心地よさ200%。(宇都木景一)
※現存するマスター起因により上映素材の映像・音声の状態が悪くお見苦しいことを、予めご了承ください。
スリン・パークシリ Surin Phaksiri
1942年生まれ、アムナートチャルーン県出身の音楽プロデューサー。異なったジャンルや形式の音楽を混ぜ合わせる発明的な手法で名高く、モーラムとルークトゥンを合体させたアンカナーン・クンチャイの「イサーン・ラム・プルーン」はその代表曲の一つ。ヒットメーカーとしても活躍しつつ刑務所の監視員も務め、勤務中に歌詞を書いていたという逸話を持つ。映画音楽の作曲、TVの司会者、ラジオDJとしても活躍したタイ・イサーン音楽界の重要人物。